【診療報酬改定2022】療養病床(療養病棟)における中心静脈栄養からの早期離脱促進対応。摂食・嚥下機能の回復に必要な体制がなければ減点に。

医療・薬・健康

2022年の診療報酬改定で療養病床において、

摂食機能または嚥下機能の回復に必要な体制を有していない場合には、「中心静脈栄養を実施している状態にある患者」について「医療区分3」でなく「医療区分2」の点数を算定することとする。

という内容が盛り込まれました。かんたんに言うと、中心静脈栄養を実施する療養病床においては嚥下機能評価が必須になる、ということ。

今回はこの内容について書いていきたいと思います。

厚生労働省の資料はこちら↓

令和4年度診療報酬改定の概要

現状の問題点と点数

「療養病棟の一部において、極めて長期間の中心静脈栄養カテーテル留置がなされている」ことが問題視されています。

現状、中心静脈栄養を実施している患者さんであれば、医療区分3を算定できます。

入院基本料の施設基準と点数

療養病棟入院基本料1

[施設基準]

  1. 看護配置20:1以上
  2. 医療区分2,3の患者が8割以上
医療区分3医療区分2医療区分1
ADL区分31、813点1,414点968点
ADL区分21、758点1,386点920点
ADL区分11,471点1,232点815点

療養病棟入院基本料2

[施設基準]

  1. 看護配置20:1以上
  2. 医療区分2,3の患者が5割以上
医療区分3医療区分2医療区分1
ADL区分31,748点1,349点903点
ADL区分21,694点1,322点855点
ADL区分11,406点1,167点751点

医療区分:患者さんの医療状態、処置などの重さによって変わる。3が一番重たい状態。

ADL区分:患者さんがどれだけ自分のことを自分でできるかを評価したもの。3が一番重い。

今回の改定で摂食・嚥下機能の回復に必要な体制を有していない場合、400点~200点ほど点数が低くなり、病院経営には大きく影響するかと思います。

摂食機能または嚥下機能の回復に必要な体制とは

中心静脈栄養を実施している状態にある者の摂食機能または嚥下機能の回復に必要な体制とは、次のいずれをも満たすことを指します。

(1)内視鏡下嚥下機能検査または嚥下造影を実施する体制を有していること。なお、当該検査等については耳鼻咽喉科またはリハビリテーション科その他必要な診療科を標榜する他医療機関との協力により確保することでも差し支えない

  →自院で嚥下内視鏡などを購入し検査できる体制にするか、他院と連携する。 

(2)摂食機能療法を自院で実施できること

(3)毎年7月に、療養病棟入院料算定患者のうち、中心静脈栄養を実施している患者の数、終了した患者の数、嚥下機能療法を実施した患者の数および(1)の「他医療機関との協力による体制の確保」の状況などを地方厚生(支)局にて届け出ること

【経過措置】

令和4年3月31日において現に療養病棟入院料1又は2に係る届出を行っている保険医療機関については、同年9月30日までの間に限り、摂食機能又は嚥下機能の回復に必要な体制が確保されているものとみなす。

令和4年3月31日において現に療養病棟入院料1又は2を算定している患者であって、医療区分3のうち「中心静脈注射を実施している状態」に該当しているものについては、当該患者が入院している病棟における摂食機能又は嚥下機能の回復に必要な体制の確保の状況にかかわらず、当該状態が継続している間に限り、医療区分3に該当する場合の点数を算定できる。

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摂食機能療法とは(算定する場合を参考に)

ここでは点数を算定する場合の留意点を記載してあります。

(1)摂食機能療法は、摂食機能障害を有する患者に対して、個々の患者の症状に対応した診療計画書に基づき、医師、歯科医師又は医師若しくは歯科医師の指示の下に言語聴覚士、看護師、准看護師、歯科衛生士、理学療法士若しくは作業療法士が1回につき30分以上訓練指導を行った場合に限り算定する。なお、摂食機能障害者とは、以下のいずれかに該当する患者をいう。

ア 発達遅滞、顎切除及び舌切除の手術又は脳卒中等による後遺症により摂食機能に障害があるもの

イ 内視鏡下嚥下機能検査又は嚥下造影によって他覚的に嚥下機能の低下が確認できるものであって、医学的に摂食機能療法の有効性が期待できるもの

(2)摂食機能療法の実施に当たっては、摂食機能療法に係る計画を作成し、医師は定期的な摂食機能検査をもとに、その効果判定を行う必要がある。なお、治療開始日並びに毎回の訓練内容、訓練の開始時間及び終了時間を診療録等に記載すること。

(3)摂食機能療法を算定する場合は、診療報酬明細書の摘要欄に疾患名及び当該疾患に係る摂食機能療法の治療開始日を記載すること。

(4)医師又は歯科医師の指示の下に言語聴覚士、看護師、准看護師又は歯科衛生士が行う嚥下訓練は、摂食機能療法として算定できる。

(5)「2」については、脳卒中の発症後14日以内の患者に対し、15分以上の摂食機能療法を行った場合に算定できる。なお、脳卒中の発症後14日以内の患者であっても、30分以上の摂食機能療法を行った場合には「1」を算定できる。

(6)当該患者の転院時又は退院時には、患者又はその家族等に対して、嚥下機能の状態の説明並びに誤嚥予防のための食事内容及び摂食方法の指導を行うとともに、転院後又は退院後の摂食機能療法を担う他の保険医療機関等の医師及びその他の職種に対して、患者の嚥下機能の状態並びに患者又はその家族等への説明及び指導の内容について情報提供を行うこと。

(7)「注3」に掲げる摂食嚥下機能回復体制加算は、摂食機能及び嚥下機能の回復の支援に係る専門知識を有した多職種により構成されたチーム(以下「摂食嚥下支援チーム」という。)等による対応によって摂食機能又は嚥下機能の回復が見込まれる患者に対して、多職種が共同して必要な指導管理を行った場合に算定できる。

(8)「注3」に掲げる摂食嚥下機能回復体制加算は、以下のアからウまでの要件をいずれも満たす場合に算定する。

ア 摂食嚥下支援チーム等による対応を開始する際には、当該患者の診療を担う医師、看護師等と共同の上、当該チーム等により、内視鏡下嚥下機能検査又は嚥下造影の結果に基づいて摂食嚥下支援計画書を作成すること。なお、すでに摂食機能療法を実施中であり、当該計画書が作成されている場合には、当該チーム等により見直しを行うこととしても差し支えない。当該計画書について、その内容を患者又はその家族等に説明の上交付するとともに、その写しを診療録等に添付すること。

イ アを実施した患者について、月に1回以上、内視鏡下嚥下機能検査又は嚥下造影を実施すること。当該検査結果等を踏まえて、摂食嚥下支援チーム等により、摂食嚥下支援計画書等の見直しに係るカンファレンスを週に1回以上行うこと。

ウ 摂食嚥下支援チームは、カンファレンスの結果に基づき、摂食嚥下支援計画書の見直し、嚥下調整食の見直し(嚥下機能の観点から適切と考えられる食事形態に見直すことや量の調整を行うことを含む。)及び摂食方法の調整や口腔管理等の見直しを行い、患者又はその家族等への指導管理を行うこと。カンファレンスの結果を踏まえて計画書等の見直しを行った際には、見直しの要点を診療録等に記載する又は計画書の写しを診療録等に添付すること。

(9)「注3」に掲げる摂食嚥下機能回復体制加算を算定する場合は、当該患者の摂食機能療法の効果や進捗状況、内視鏡下嚥下機能検査又は嚥下造影の結果及びカンファレンスの概要を診療録等に記載又は添付すること。また、内視鏡下嚥下機能検査又は嚥下造影を実施した日付及びカンファレンスを実施した日付を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。

(10)「注3」に掲げる摂食嚥下機能回復体制加算を算定するに当たっては、FIM及びFOIS(function Oral Intake Scale)を測定すること。

新たな加算点数

摂食嚥下に取り組むことで以下の加算も可能となります。

摂食嚥下機能回復体制加算


▼加算1:週1回210点(医師・歯科医師、適切な研修を修了した看護師、専従の言語聴覚氏、管理栄養士で構成される「摂食嚥下支援チーム」を設置し、鼻腔栄養・胃瘻・中心静脈栄養患者の経口摂取回復率35%以上、摂食機能・嚥下機能の実績を報告するなどの施設基準を満たす)


▼加算2:週1回190点(医師・歯科医師、適切な研修を修了した看護師、専従の言語聴覚氏、管理栄養士で構成される「摂食嚥下支援チーム」を設置し、摂食機能・嚥下機能の実績を報告するなどの施設基準を満たす)


▼加算3:週1回120点(療養病棟入院基本料1・2取得病棟において、専任医師・看護師または言語聴覚士の配置、「嚥下機能評価を行って嚥下リハビリ等を実施したことから嚥下機能が回復し、中心静脈栄養患者を終了した患者」が1年間に2人以上、摂食機能・嚥下機能の実績を報告するなどの施設基準を満たす)

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