原発性腋窩多汗症の新薬、エクロックゲルとは。

医療・薬・健康

ワキの汗というと、特に暖かくなってくると気になりますが、人によっては年中気になる方もいるのでは。

そのせいで着たい洋服を着られないや、においなどが気になってしまうという悩みをかかえる方もいるかと思います。

昨今では制汗剤の種類も非常に多く、うまく組み合わせたりして使えばワキの汗もしっかりと抑えることができるようです。

しかしそれでもまだまだ汗が気になるという方に、お医者さんで処方してもらえる薬が2020年11月に登場しました。

それが、「エクロックゲル」です。

原発性腋窩多汗症とは

エクロックゲルの適応病名である「原発性腋窩多汗症(げんぱつせいえきかたかんしょう)」、聞きなれない言葉ですが、明らかな原因や、原因となる疾患や薬の服用がなく、また気候や運動などの温熱刺激や緊張やストレスなどの精神負荷の有無にかかわらず腋窩(えきか:わきの下のくぼんだ部分のこと)に大量の汗をかく疾患です。

原発性腋窩多汗症に対して、原因となる疾患などがあきらかなものを続発性腋窩多汗症といいます。

そして多汗症というのは、着る洋服の色やデザインなどが制限されたり、頻繁に着替えやシャワーなどが必要になるなど日常生活に支障をきたすほどの汗がでる状態のことをいいます。

原発性腋窩多汗症の診断には国際的なワーキンググループで作られた原発性局所多汗症の診断基準が用いられます。下記がその診断基準です。

原因不明の過剰な局所性発汗が6ヵ月以上持続していることに加え、以下の6項目中2項目以上を満たす

  • 両側性かつ左右対称性に多汗がみられる
  • 多汗によって日常生活に支障が生じている
  • 週1回以上の頻度で多汗エピソードがみられる
  • 25歳未満で発症した
  • 家族歴がある
  • 睡眠時は局所性の発汗がみられない

原発性腋窩多汗症の現在までの治療

原発性腋窩多汗症の治療に関してですが、以下のようなものがあります。

塩化アルミニウム外用

塩化アルミニウムは原発性多汗症の第一選択薬にすることが推奨されています。塩化アルミニウムが汗を出す管の細胞に作用し、その管を塞ぐことで発汗を抑制します。外用であり、あらゆる年齢に使うことができるのも特徴です。副作用としては刺激性の皮膚炎がありますが、軽症の患者さんであればほとんどの患者さんで効果がみられます。

しかしながら院内製剤であり、保険の適応がないのが難点です。

イオントフォレーシス

特殊な機械を用いてワキの下に微弱な電流を流すことで発汗をおさえます。これは電流を流した時に生じる水素イオンが汗を出す細胞に作用し汗を作れなくしているのです。

こちらは主に手足の多汗症に使われますがワキに使われる病院もあるようです。

また効果の持続も数日から数週間なので、その都度通院しなければならないという手間があります。

こちらは塗り薬で効果がない場合に保険適応となるので比較的安価に治療が受けられます。

A型ボツリヌス毒素局所注射(ボトックス注射)

ボツリヌス毒素を注射することで発汗を促す交感神経から汗腺への刺激をブロックして発汗を抑えます。ワキの10~20か所ぐらいに注射します。

効果の持続は人によってさまざまですが半年から1年ぐらい持続すると言われています。

日本では2012年11月に重症腋窩多汗症に対して保険適応となっています。保険適応になっていますが薬剤費が比較的高く、高価な治療(おおよそ2万円~3万円以上)となっています。

外科的手術

胸部から内視鏡を挿入し交感神経を高周波で凝固する交感神経遮断術と、汗を出すエクリン汗腺を手術で除去する方法があります。ほぼ永久に効果が続くとされています。また保険もききます。

しかしながらエクリン汗腺は浅いところにあるので皮膚のダメージが大きいと言われています。手術した際は入院して安静にしなければいけないなど、なかなかハードルの高いものとなっています。

また副作用として代償性発汗(だいしょうせいはっかん)という体の他の部位からの発汗が増えることがあります。

エクロックゲルの特徴

ではエクロックゲルについて。

一般名:ソフピロニウム臭化物ゲル

適応病名:原発性腋窩多汗症

用法容量:1日1回適量を腋窩に塗布する。

薬価:20g1本 ¥4、874 (1g ¥243.7)

処方してもらった際にかかる金額は以下の通りです。

3割負担1割負担
  約1470円  約490円 
負担割合ごとの薬剤費

※実際にはこの上に初診料、再診料等がかかります。

1日1回両脇に塗布すると1本(20g)で2週間分(14日)になります。

使い方は、専用のアプリケーターにエクロックゲルをポンプで1プッシュ載せて、それを片方の腋に塗布します。もう一方の腋にも同じく1プッシュ分塗布します。

使用できる年齢ですが、添付文書上には「12歳未満の小児等を対象とした国内臨床試験は実施し
ていない。」とありますので、12歳以上の方が対象になってくると思います。

副作用については添付文書上では、皮膚炎(6.4%)、紅斑(5.7%)そう痒感、湿疹、口喝などがあります。

塗り薬でかつ保険も効くので前述の治療よりも手軽ではないでしょうか。

作用機序

エクロックゲルの作用機序について。エクリン汗腺は「交換神経節後ニューロン」という神経線維から放出されるアセチルコリンの刺激で汗を出します。そこでエクロックゲルは、このアセチルコリンがエクリン汗腺を刺激するのを抑制し汗が出るのを抑えるのです。

ということで、気になる方はお近くの皮膚科のお医者さんで尋ねてみるといいかもしれません。

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