HIF-PH阻害剤比較一覧表2021年9月版(EXCEL版一覧もあります。)

医療・薬・健康

現在のところすでに5剤発売されている腎性貧血治療薬、HIF-PH阻害剤について書いていきたいと思います。

腎性貧血とは

まずは腎性貧血とは、簡単に言うと腎臓の機能不全が原因で起こる貧血のことです。

よく言われる「貧血」というのは、「鉄欠乏性貧血」のことを指しています。こちらは体の鉄が不足してヘモグロビンの産生が不十分になることで起こります。

一方腎性貧血は、腎臓の働きが低下することでエリスロポエチンの分泌が減り、赤血球の産生が低下することで起こる貧血です。

エリスロポエチンというのは、主に腎臓で産生される糖タンパクホルモンで、赤血球の産生を促すホルモンです。またエリスロポエチンの産生は血液中の酸素分圧によって調節されており、酸素分圧が低下すると産生が増加します。

腎性貧血になると、赤血球の産生が不十分になり、酸素が十分に身体中に行きわたらなくなることから動悸や息切れ、めまいや立ちくらみ、疲労が回復しないなどの症状が出ます。

腎性貧血と診断するにはまず鉄欠乏性貧血などエリスロポエチン低下が原因以外の貧血を否定してからでないと診断はできません。

これまでの腎性貧血の治療

治療薬としては主にESA製剤(赤血球造血刺激因子製剤)と言われる薬が使われています。HIF-PH阻害剤が発売された今でもこちらが治療薬の主流となっています。

これは不足しているエリスロポエチンを直接体に投与するというものです。この薬には注射剤しかなく2週間~4週間隔で通院して投与する必要があります。主な薬は以下のとおりです。

薬剤名メーカー投与間隔
エスポー協和発酵キリン1週~2週1回
エポジン中外製薬週1回
ミルセラ中外製薬2週~4週1回
ネスプ協和発酵キリン2週~4週1回
ESA製剤(保存期慢性腎臓病における腎性貧血の用法)

エスポーやエポジンが最初に発売され、その後投与間隔の長いミルセラとネスプが発売されました。それにより患者さんの利便性も向上しています。

HIF-PH阻害剤とは

対してHIF-PH阻害剤、最大の特徴はESAの注射剤と違い飲み薬(経口薬)という点です。

HIFとは「hypoxia-inducible factor」の略で「低酸素誘導因子」と訳されます。PHは「prolyl hydroxylase」の略で「プロリン水酸化酵素」と訳します。

HIFは「低酸素誘導因子」ということで体が低酸素状態になると活発化する物質です。このHIFがエリスロポエチンの産生を調整しており、活発化するとエリスロポエチンを多く産生し赤血球を作るのを促進します。またHIFは鉄吸収や鉄利用障害も改善し、鉄が造血に有効に使用できるようにする働きも持っています。

しかしHIFはHIF-PHによって分解されます。そこでこのHIF-PHがHIFを分解するのを抑制しエリスロポエチン産生を促進させるのがこのHIF-PH阻害剤の作用機序です。

HIF-PH阻害剤によって、疑似的に身体を低酸素状態の高地にいると錯覚させることで、エリスロポエチンの産生を促進させるという働きです。

どの薬剤もESAで未治療の場合、投与開始の目安は、腹膜透析患者及び保存期慢性腎臓病患者ではヘモグロビン濃度で11g/dl未満、血液透析患者ではヘモグロビン濃度で10g/dl未満となっています。

HIF-PH阻害剤共通のメリット

さてESAよりもHIF-PH阻害剤を使うメリットは侵襲的でない経口薬ということ以外にもあります。

それが体内の鉄の量を調節しているヘプシジンという物質を減らすことができる点です。ヘプシジンは肝臓で産生されるペプチドホルモンです。鉄のトランスポーターであるフェロポーチンに作用し血漿中の鉄量を制御し腸からの鉄の吸収などを抑制します。つまりヘプシジンは体内の鉄量を減少させます。

HIF-PH阻害薬はこのヘプシジンの産生をおさえる作用があるため、体内の鉄量を増やし鉄利用率も増加させることができます。

それでは現在まで発売されている5剤について具体的に見ていきましょう。

エベレンゾ

一般名

ロキサデュスタット

用量・薬価

20mg  :375.4円

50mg :793.9円

100mg:1399円

用法用量

赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合通常、成人には、ロキサデュスタットとして1回50mgを開始用量とし、週3回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1回3.0mg/kgを超えないこととする。

赤血球造血刺激因子製剤から切り替える場合通常、成人には、ロキサデュスタットとして1回70mg又は100mgを開始用量とし、週3回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1回3.0mg/kgを超えないこととする。

特徴

発売されている5剤の中で一番最初に発売したのがこちらのエベレンゾです。発売当初は「透析施行中の腎性貧血」のみの適応でしたが2020年12月の長期処方解禁と同時に保存期慢性腎臓病に伴う貧血にも使用可能となり、効能又は効果が「腎性貧血」に変更になりました。

この薬剤の最大の特徴は、用法用量ではないでしょうか。他の4剤と違い週3回服用というのが大きな特徴です。

バフセオ

一般名

バダデュスタット

用量・薬価

150mg:213.5円

300mg:376.2円

用法用量

通常、成人にはバダデュスタットとして、1回300mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回600mgまでとする。

特徴

ドーズが150mgと300mgの2種類というシンプルさが他の薬と違うところでしょうか。

ダーブロック

一般名

ダプロデュスタット

用量

1mg:105.4円

2mg:185.8円

4mg:327.4円

6mg:446.1円

用法用量

1.保存期慢性腎臓病患者

赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合
通常、成人にはダプロデュスタットとして1回2mg又は4mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回24mgまでとする。
赤血球造血刺激因子製剤から切り替える場合
通常、成人にはダプロデュスタットとして1回4mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回24mgまでとする。

2.透析患者

通常、成人にはダプロデュスタットとして1回4mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回24mgまでとする。

エナロイ

一般名

エナロデュスタット

用量

2mg:275.9円

4mg:486.1円

用法用量

1.保存期慢性腎臓病患者及び腹膜透析患者

通常,成人には,エナロデュスタットとして1回2mgを開始用量とし,1日1回食前又は就寝前に経口投与する。以後は,患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが,最高用量は1回8mgとする。

2.血液透析患者

通常,成人には,エナロデュスタットとして1回4mgを開始用量とし,1日1回食前又は就寝前に経口投与する。以後は,患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが,最高用量は1回8mgとする。

マスーレッド

一般名

モリデュスタットナトリウム

用量

5mg  :44.3円

12.5mg:93.7円

25mg :165.1円

75mg :405.3円

用法用量

1.保存期慢性腎臓病患者

・赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合

通常、成人にはモリデュスタットとして1回25mgを開始用量とし、1日1回食後に経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1回200mgとする。

・赤血球造血刺激因子製剤から切り替える場合

通常、成人にはモリデュスタットとして1回25mg又は50mgを開始用量とし、1日1回食後に経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1回200mgとする。

2.透析患者

通常、成人にはモリデュスタットとして1回75mgを開始用量とし、1日1回食後に経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1回200mgとする。

一覧表

商品名メーカー一般名用量・薬価用法用量(ESA未治療)開始用量薬価(1か月(28日)薬価)用法用量(ESAから切り替え)開始用量薬価(1か月(28日)薬価
エベレンゾアステラス製薬ロキサデュスタット20mg=375.4円    50mg=793.9円    100mg=1399円1回50mgを開始用量とし週3回投与。患者の状態に応じて適宜増減。793.9円(9526.8円)70mg又は100mgを開始用量とする70mg=1,169.3円(14,0316円) 100mg=1,399円(16,788円)
バフセオ田辺三菱製薬バダデュスタット150mg=213.5円 300mg=376.2円1回300mgを開始用量とし、1日1回投与。患者の状態に応じて適宜増減。376.2円(10,533.6円)未治療と同様376.2円(10,533.6円)
ダーブロック協和発酵キリンダプロデュスタット1mg=105.4円  2mg=185.8円 4mg=327.4円 6mg446.1円1回2mg又は4mgを開始用量とし、1日1回投与。患者の状態に応じて適宜増減。最大1日1回24mgまで。2mg=105.4円(5,202.4円)4mg=327.4円(9167.2円)1回4mgを開始用量とし、1日1回投与。患者の状態に応じて適宜増減。最大1日1回24mgまで。327.4円(9167.2円)
エナロイ鳥居薬品エナロデュスタット2mg=275.9円  4mg=486.1円1回2mgを開始用量とし、1日1回食前又は就寝前に投与する。患者の状態に応じて適宜増減。275.9円(7,725.2円)未治療と同様275.9円(7,725.2円
マスーレッドバイエル薬品モリデュスタットナトリウム5mg=44.3円 12.5mg=93.7円 25mg=165.1円 75mg=405.3円1回25mgを開始用量とし、1日1回食後に投与。患者の状態に応じて適宜増減。最大1回200mg165.1円(4,127.5円)1回25mg又は50mgを開始用量とし、1日1回食後投与。患者の状態に応じて適宜増減。最大1回200mg25mg=165.1円(4,127.5円)  50mg=330.2(9245.6円)
HIF-PH阻害剤一覧

より詳細な一覧は下のようなEXCELファイルで作成していますので必要な方はご利用ください。

HIF-PH阻害剤一覧(EXCEL版)

Excelデータの一覧表はこちら。

読んでいただきありがとうございました。

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