2023年4月18日新規糖尿病治療薬マンジャロが発売されました。
マンジャロの特徴について書いていきたいと思います。
既存治療薬と何が違うのか
マンジャロ皮下注は、国内初の「持続性GIP/GLP-1受容体作動薬」です。
今まではGLP-1受容体作動薬という薬剤はありました。今回発売のマンジャロに関してはGLP-1に加えて、GIPも含有されています。ですのでより強力な効果が期待されています。
現在発売されているGLP-1受容体作動薬はこちら。
商品名 | 一般名 | 用法 | 販売元 | 添付文書 |
ビクトーザ皮下注 | リラグルチド | 1日1回 | ノボ | 添付文書 |
ビデュリオン皮下注用2mgペン | エキセナチド | 週1回 | アストラゼネカ | 添付文書 |
バイエッタ皮下注ペン | エキセナチド | 1日2回朝夕食前 | アストラゼネカ | 添付文書 |
リキスミア皮下注300ug | リキシセナチド | 1日1回朝食前 | サノフィ | 添付文書 |
トルリシティ皮下注0.75ug | デュラグルチド | 週1回 | 日本イーライリリー | 添付文書 |
オゼンピック皮下注0.25、0.5、1mg SD | セマグルチド | 週1回 | ノボ | 添付文書 |
オゼンピック皮下注2mg | セマグルチド | 週1回 | ノボ | 添付文書 |
GIP,GLP-1とは
GIP、GLP-1はともにインクレチンと呼ばれる消化管ホルモンの一種です。(※インクレチンIntestine Secretion Insulinから命名されたもの)食事をすると腸管から分泌され血中に入りグルカゴンの抑制やインスリン分泌を促進させるホルモンです。
GIPとGLP-1の作用
GIPとGLP-1の主な作用を以下の表にまとめました。
GIP | GLP-1 | |
食欲 | 下げる | 下げる |
満腹感 | - | 上げる |
インスリン感受性 | 上げる | ー |
インスリン分泌 | 上げる | 上げる |
グルカゴン分泌 | 上げる | 下げる |
胃内容物の排泄 | ー | 下げる |
マンジャロ皮下注アテオス
一般名
チルゼパチド
製造販売元
日本イーライリリー株式会社
(販売元:田辺三菱製薬株式会社)
作用機序
上記のGIPとGLP-1の作用により、インスリン分泌促進、インスリン感受性の亢進させることで血糖を下げます。また食欲を下げて満腹感を上げること、胃の内容物の排泄をゆっくりさせることで体重減少効果も期待できます。
効能・効果
2型糖尿病
用法用量
通常、成人には、チルゼパチドとして週1回5mgを維持用量とし、皮下注射する。ただし、週1回2.5mgから開始し、4週間投与した後、週1回5mgに増量する。
なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回5mgで効果不十分な場合は、4週間以上の間隔で2.5mgずつ増量できる。ただし、最大用量は週1回15mgまでとする。
規格・薬価
商品名 | 規格 | 薬価 | 1か月薬価 | 1割負担 | 3割負担 | 備考 |
マンジャロ皮下注2.5mgアテオス | キット | 1924円 | 7696円 | 770円 | 2309円 | 発売中 |
マンジャロ皮下注5mgアテオス | キット | 3848円 | 15,392円 | 1539円 | 4618円 | 発売中 |
マンジャロ皮下注7.5mgアテオス | キット | 5772円 | 23,088円 | 2309円 | 6926円 | 6月発売 |
マンジャロ皮下注10mgアテオス | キット | 7696円 | 30,784円 | 3078円 | 9235円 | 6月発売 |
マンジャロ皮下注12.5mgアテオス | キット | 9620円 | 38,480円 | 3848円 | 11,544円 | 6月発売 |
マンジャロ皮下注15mgアテオス | キット | 11544円 | 46,176円 | 4618円 | 13,853円 | 6月発売 |
投与方法
アテオスという注射デバイスを使っています。これはトルリシティ皮下注と全く同じデバイスとなっています。「あてて押す」という意味で「アテオス」と名付けられたそうです。
臨床データ(SURPASS J-mono試験)
マンジャロの効果についてですが、日本人2型糖尿病患者を対象とした国内第Ⅲ相臨床試験、SURPASS J-mono試験の結果についてかいていきます。(参考:イーライリリーHPよりhttps://www.lillymedical.jp/ja-jp/answers/172939)
試験概要
対象:日本人2型糖尿病患者636例を対象
方法:二重盲検下で、マンジャロ5mg、10mg、15mg、デュラグルチド0.75mg(トルリシティ)を同割合で無作為に割り付けた。マンジャロは2.5mgから開始し、維持容量に達するまで4週間ごと2.5mgずつ増量し52週投与。
結果
HbA1c低下効果
製品名 | A1c平均変化量 |
マンジャロ5mg群 | -2.4% |
マンジャロ10mg群 | -2.6% |
マンジャロ15mg群 | -2.8% |
トルリシティ0.75mg群 | -1.3% |
52週時までおHbA1cが7.0%未満、6.5%以下、または5.7%未満になった被験者の割合
7.0%未満
製品名 | 達成率 |
マンジャロ5mg群 | 94% |
マンジャロ10mg群 | 97% |
マンジャロ15mg群 | 99% |
トルリシティ0.75mg群 | 67% |
6.5%以下
製品名 | 達成率 |
マンジャロ5mg群 | 92% |
マンジャロ10mg群 | 96% |
マンジャロ15mg群 | 97% |
トルリシティ0.75mg群 | 40% |
体重低下効果
製品名 | 体重変化量 |
マンジャロ5mg群 | -5.8kg |
マンジャロ10mg群 | -8.5kg |
マンジャロ15mg群 | -10.7kg |
トルリシティ0.75mg群 | -0.5kg |
副作用
重大な副作用として、低血糖、急性膵炎、胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸が報告されています。その他の副作用として、悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、消化不良、食欲減退等が報告されています。
やせ薬としての一面も
もともとGLP-1受容体作動薬が「GLP-1ダイエット」などと言ったりやせ薬として話題になっていました。今回のこのマンジャロはGLP-1の食欲を下げる効果、満腹感を上げる効果、胃の内容物の流れをゆっくりさせる効果に加えて、GIPの食欲を下げる効果がプラスされるのでより体重減少効果が期待されます。実際に体重減少効果を見たデータでもトルリシティと比較して、有意差を持って体重を減少させています。(上記の体重低下効果部分参照)しかしながらやせ薬としての保険適応は認められていませんので、体重減少目的で投与する場合はあくまでも自由診療で医師の判断と患者さんがよく考えて検討すべきです。
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