日本で薬事承認された経口のコロナ治療薬「ラゲブリオ」と「パキロビッドパック」」ですが、そもそも発症5日以内の軽症~中等症の患者さんに使える薬となっています。
ですが現状ではすべての軽症~中等症のコロナ感染者に使われているわけではありません。むしろ感染してもこのお薬を使われないことの方が多いです。
感染者が増えているのに薬があまり使われていない理由について探っていきたいと思います。また今回は先に承認されたラゲブリオを中心に書いていきたいと思います。
ラゲブリオの投与実績
まずはじめにラゲブリオの投与実績についてですが、2022年2月28日時点での投与実績報告数が日本全国で82,622人分だそうです。承認されたのが2021年12月24日ですのでおおよそ2か月でこれだけの数の処方がされたということになります。
ちなみに2022年1月~2月末の日本全国のコロナウイルス新規陽性者の数は3,279,350人なので、陽性者のうちラゲブリオを処方されたのはおおよそ2.5%程度。
他にも治療薬は存在するのでなんともいえませんが、投与数はかなり少ないことがわかります。
(参考:厚生労働省(「ラゲブリオ」の都道府県毎の使用状況について)chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/viewer.html?pdfurl=https%3A%2F%2Fwww.mhlw.go.jp%2Fcontent%2F000910792.pdf&clen=592640&chunk=true)
処方する医療機関は登録が必要
ラゲブリオを処方するにはまずラゲブリオ登録センターに医療機関登録をする必要があります。
2022年2月28日現在での登録医療機関数は、44,933施設(うち医療機関26,042施設 薬局18,891施設)となっています。またその中での発注実績のある医療機関数は21,477施設とおよそ半分となっています。
ちなみに全国の医療機関数はおよそ11万施設(病院8,372施設 一般診療所102,105施設)で、薬局はおよそ6万施設ですので、合計で17万施設あります。
このように登録が必要であり、すべての医療機関が処方できるわけではないという点で制限がかかっています。また発熱外来、コロナ検査を実施している医療機関でもこのラゲブリオの医療機関登録を行っていない施設が少なくないようです。
処方条件がある
軽症からという適応を有していますが、現状日本で使用するには処方条件があります。
ラゲブリオ・パキロビッドパックともに添付文書には下記の文言が入っています。
効能又は効果に関連する注意
臨床試験における主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有する等、本剤の投与が必要と考えられる患者に投与すること。また、本剤の投与対象については最新のガイドラインも参考にすること。[17.1.1 参照]
ラゲブリオ・パキロビッドパック添付文書より
つまり重症化しそうな患者さん、重症化しそうなリスクを有する患者さんにしか使えないのです。
そしてその重症化リスクというのが以下のようなもの。
- 60歳以上
- BMI 25kg/m2超
- 喫煙者(過去30日以内の喫煙があり、かつ生涯に100本以上の喫煙がある)
- 免疫抑制疾患又は免疫抑制剤の継続投与
- 慢性肺疾患(喘息は、処方薬の連日投与を要する場合のみ)
- 高血圧の診断を受けている
- 心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、一過性脳虚血発作、心不全、ニトログリセリンが処方された狭心症、冠動脈バイパス術、経皮的冠動脈形成術、頚動脈内膜剥離術又は大動脈バイパス術の既往を有する)
- 1型又は2型糖尿病
- 限局性皮膚がんを除く活動性の癌
- 慢性腎臓病
- 神経発達障害(脳性麻痺、ダウン症候群等)又は医学的複雑性を付与するその他の疾患(遺伝性疾患、メタボリックシンドローム、重度の先天異常等)
- 医療技術への依存(SARS-CoV-2による感染症と無関係な持続陽圧呼吸療法等)、等
この条件があるのでだれにでもというわけにはいかないのが現状です。
供給量が少ない
ラゲブリオに関しては、政府は昨年(2021年)に薬事承認された場合160万人を確保することを発表しています。そして現状、2021年12月に20万人分、22年1月に5万人分、2月に22万人分、3月に33万人分(予定)が日本政府に納入となっています。
というわけでラゲブリオの処方が少ない点について書いていきました。
もう少し条件を緩和してたくさんの患者さんに使えるようになればいいですね。
読んでいただきありがとうございました。
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