2番目の新型コロナ治療経口薬「パキロビッドパック」とは。

医療・薬・健康

猛威をふるうコロナウイルスに対して日本でも「ラゲブリオ」に続き、新たに承認、使用開始された薬「パキロビッドパック」について紹介していきたいと思います。

商品名:パキロビッドパック

一般名:ニルマトレルビル錠/リトナビル錠

2製剤が一つになった製剤です。

開発したのはファイザー社

このパキロビッドパックを開発したのはアメリカのファイザー社(Pfizer)。アメリカではパクスロビドと呼ばれています。

2つの薬がセットされた製剤

パキロビッドパックは名前にあるように「パック」製剤となっています。ピロリ菌除菌のパック製剤のように、このパキロビッドパックは2種類の製剤がセットされた薬になっています。

1つ目の製剤が、「ニルマトレルビル錠」です。

2つ目の製剤が、「リトナビル錠」です。

作用機序

1つ目の製剤、ニルマトレルビルがSARS-CoV-2のメインプロテアーゼを阻害し、ポリタンパク質の切断を阻止することで、ウイルス複製を抑制する。


2つ目の製剤、リトナビルは検討した最高濃度(3μmol/L)までSARS-CoV-2に対して抗ウ
イルス活性を示さなかった。リトナビルはニルマトレルビルのCYP3Aによる
代謝を阻害し、血漿中濃度を増加させる。

簡単に言うと、ウイルスの増殖を抑えるという作用機序なのです。ウイルスを殺したり、弱めたりするのではありません。

またリトナビルにはウイルスを抑制する効果はなく、ニルマトレルビルがより効果を高められるようにする作用を有しています。

臨床成績

国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験[C4671005(EPIC-HR)試験]では、

プラセボと比較して、症状発現から3日以内で入院または死亡のリスクを89%減少させました。症状発現から5日以内では88%減少。また入院していない高リスクの成人では、プラセボと比較して死亡はありませんでした。

効能又は効果

SARS-CoV-2による感染症

用法用量

通常、成人及び12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、ニルマトレルビルとして1回300mg及びリトナビルとして1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与する。

ニルマトレルビル錠は1錠中に150mg含まれているので1回2錠、リトナビル錠は1錠中に100mg含まれているので1回1錠で、1回に計3錠飲む必要があります。

処方できる患者さんとは

ラゲブリオは重症化リスク因子を有する患者さんという文言がついており処方患者さんを制限していますが、パキロビッドパックも同じく処方条件がついています。

興味のある方はこちらの記事もどうぞ。

パキロビッドパックの処方に際しての注意事項として添付文書にはこう書かれています。

効能又は効果に関連する注意

臨床試験における主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有する等、本剤の投与が必要と考えられる患者に投与すること。また、本剤の投与対象については最新のガイドラインも参考にすること。[17.1.1 参照]

重症度の高いSARS-CoV-2による感染症患者に対する有効性は確立していない。

パキロビッドパック添付文書より

ラゲブリオ同様に、こちらも重症化リスク因子を有する患者さんのみへの処方となります。この重症化リスク因子を有する患者さんとは、日本感染症学会の「COVID-19 に対する薬物治療の考え方 第13報」に記載のある以下のものです。

  • 60歳以上
  • BMI 25kg/m2超
  • 喫煙者(過去30日以内の喫煙があり、かつ生涯に100本以上の喫煙がある)
  • 免疫抑制疾患又は免疫抑制剤の継続投与
  • 慢性肺疾患(喘息は、処方薬の連日投与を要する場合のみ)
  • 高血圧の診断を受けている
  • 心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、一過性脳虚血発作、心不全、ニトログリセリンが処方された狭心症、冠動脈バイパス術、経皮的冠動脈形成術、頚動脈内膜剥離術又は大動脈バイパス術の既往を有する)
  • 1型又は2型糖尿病
  • 限局性皮膚がんを除く活動性の癌
  • 慢性腎臓病
  • 神経発達障害(脳性麻痺、ダウン症候群等)又は医学的複雑性を付与するその他の疾患(遺伝性疾患、メタボリックシンドローム、重度の先天異常等)
  • 医療技術への依存(SARS-CoV-2による感染症と無関係な持続陽圧呼吸療法等)、等

となっています。また承認審査時の試験([C4671005(EPIC-HR)試験)の組み入れ基準、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第6.2 版」に記載の重症化リスク因子が想定されるとされています。詳しくは以下のとおりです。

C4671005(EPIC-HR)試験の組み入れ基準における重症化リスク因子

  • 60歳以上
  • BMI 25kg/m2超
  • 喫煙者(過去30日以内の喫煙があり、かつ生涯に100本以上の喫煙がある)
  • 免疫抑制疾患又は免疫抑制剤の継続投与
  • 慢性肺疾患(喘息は、処方薬の連日投与を要する場合のみ)
  • 高血圧の診断を受けている
  • 心血管系疾患(心筋梗塞、脳卒中、一過性脳虚血発作、心不全、ニロトグリセリンが処方された狭心症、冠動脈バイパス術、経皮的冠動脈形成術、頸動脈内膜剥離術又は大動脈バイパス術の既往を有する)
  • 1型又は2型糖尿病
  • 慢性腎臓病
  • 鎌状赤血球症
  • 神経発達障害(脳性麻痺、ダウン症候群等)又は医学的複雑性を付与するその他の疾患(遺伝性疾患、メタボリックシンドローム、重度の先天異常等)
  • 限局性皮膚がんを除く活動性のがん
  • 医療技術への依存(SARS-CoV-2による感染症と無関係な持続陽圧呼吸療法等)

「診療の手引き」(第 6.2 版)における重症化リスク因子

  • 65 歳以上の高齢者
  • 悪性腫瘍
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 慢性腎臓病
  • 2型糖尿病
  • 高血圧
  • 脂質異常症
  • 肥満(BMI 30 以上)
  • 喫煙
  • 固形臓器移植後の免疫不全
  • 妊娠後期

併用注意・併用禁忌

このお薬は併用注意と禁忌が非常に多い薬剤となっています。リトナビルがその原因となっているそうです。

併用注意・禁忌の薬が下記リンク先に一覧になっていますので興味のある方はこちらをどうぞ。

国立国際医療研究センター病院「「パキロビッド®パックとの併用に慎重になるべき薬剤リスト」の公開について

現状

パキロビッドパックは併用注意や併用禁忌が非常に多い薬です。ですので、安全性を確保するためまずは、

①2月27日までは全国約2000の医療機関で院内処方により提供する(試験運用期間と位置付ける)

②使用実績等を見て、以降に対象を拡大していく

という段階的に医療現場へ提供していく考えが後藤茂之厚生労働大臣から示されています。

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